ホテル・旅館
戸建・空き家を旅館業(簡易宿所)にできる条件は?購入前に見る5つのポイント
東京23区で戸建や小さなビルを旅館業の施設に転用するための条件を、用途地域・建築基準法・消防・面積基準・区の条例の5つに分けて整理します。
戸建を旅館業の施設にできるかは、まず用途地域で決まります。第一種・第二種低層住居専用地域や中高層住居専用地域では旅館・ホテルは建てられません。用途地域を通過したら、建築基準法(避難・階段の区画)、消防設備、簡易宿所の面積基準、区の条例の順に確認します。200㎡以下なら建築確認の申請は不要ですが、基準への適合は必要です。
要点
- 最初の関門は用途地域。低層住居専用・中高層住居専用・工業地域などでは旅館・ホテルは不可
- 用途変更が200㎡以下なら建築確認の申請は不要(2019年6月25日施行)。ただし基準への適合は必須
- 3階建て・200㎡未満は、警報設備などを設ければ耐火建築物にしなくてよい特例がある
- 1〜2階建ての戸建は、主に特定小規模施設用の自動火災報知設備で対応できる
- 帳場(フロント)や学校からの距離など、区の条例で条件が上乗せされる
① 用途地域:その場所で旅館業ができる?
答え:旅館・ホテルが建てられる用途地域でなければ、建物がどれだけ良くても許可は出ません。物件資料の「用途地域」欄を最初に確認します。
| 用途地域 | ホテル・旅館 |
|---|---|
| 第一種・第二種低層住居専用地域、田園住居地域 | 不可 |
| 第一種・第二種中高層住居専用地域 | 不可 |
| 第一種住居地域 | 3,000㎡以下なら可 |
| 第二種住居地域、準住居地域 | 可 |
| 近隣商業地域、商業地域、準工業地域 | 可 |
| 工業地域、工業専用地域 | 不可 |
② 建築基準法:200㎡と3階建てがカギ
答え:用途を変える部分が200㎡以下なら建築確認の申請は不要です。ただし、確認申請がいらないだけで、建築基準法と消防法に適合させる義務はそのまま残ります。
この「200㎡」は、2019年6月25日に全面施行された改正建築基準法で、それまでの100㎡から引き上げられました。
また同じ改正で、延べ面積200㎡未満・3階以下の建物は、必要な措置を講じれば耐火建築物などにしなくてよくなりました。宿泊のように就寝に使う用途では、自動火災報知設備などの警報設備を設けることが条件です。
3階建ての戸建では、階段まわりの区画(竪穴区画)が問題になりやすく、扉の性能などの細かい要件があります。旅館への当てはめは建物ごとに判断が分かれるため、建築士の確認が欠かせません。
③ 消防:必要な設備は階数で変わる
答え:1〜2階建ての住宅なら、主に特定小規模施設用の自動火災報知設備で対応できます。3階以上や地下がある建物は、原則として通常の自動火災報知設備が必要です。
申請では、消防署が発行する「消防法令適合通知書」を保健所に提出します。消防署が立入検査をして、基準に合っていれば交付されます。
- 1〜2階建て:主に特定小規模施設用自動火災報知設備
- 3階以上・地下あり:原則として自動火災報知設備
- 屋内階段が1つだけの建物は、感知器の規制が厳しくなる
- 誘導灯:出入口・通路・階段(見通しがきく場合は免除される箇所あり)
- カーテン・じゅうたんは防炎物品
- 消火器:台所。延べ150㎡以上なら建物全体
④ 面積と設備:簡易宿所の基準
答え:簡易宿所は客室の延床面積33㎡以上が原則ですが、宿泊者を10人未満にする場合は「3.3㎡×宿泊者数」以上で足ります(2016年4月施行)。小さな戸建でも、定員を絞れば基準を満たせることがあります。
玄関帳場(フロント)は、2018年6月施行の改正で、本人確認や鍵の受け渡し、緊急時の対応ができる設備があれば代替できるようになりました。ただし区の条例で別の定めがあることに注意してください。
計算例
例:定員の考え方(説明用)
- 客室の延床面積が20㎡の場合
- 20㎡ ÷ 3.3㎡ = 約6.06 → 宿泊者は6人まで
- 33㎡に届かなくても、定員6人(10人未満)なら面積基準を満たす
客室の数え方や他の設備基準は区の条例・保健所の運用で確認してください。
⑤ 区の条例:上乗せ条件
答え:同じ東京23区でも、区によって条件が違います。購入前に、物件がある区の手引きを必ず確認します。
- 台東区:対面できる玄関帳場を設け、営業時間中は従事者を常駐。学校などから110m以内は不許可になる場合がある
- 北区:居住型(5室以下・定員10人以下)は帳場不要。不在型の簡易宿所も、5室以下・定員10人以下で、防犯カメラ(72時間以上保存)や概ね10分以内の駆けつけ体制などの代替措置をとれば帳場を設けなくてよい
- 新宿区:旅館用途の延床面積を200㎡超とする最低規模や、帳場の設置・従業員の常駐を求める条例改正案が出ている(2026年10月時点で未成立)
購入前チェックリスト
- 用途地域は旅館・ホテルが可能な地域か
- 用途を変える面積は200㎡以下か、超えるか
- 階数(3階建てか)と、屋内階段の数
- 必要な消防設備と、その工事の見通し
- 客室面積と、想定する定員
- 区の条例(帳場、学校からの距離、近隣周知)
- 検査済証の有無(台東区は施設完成後に写しの提出を求めている)
出典・参考資料
よくある質問
再建築不可の戸建でも旅館業はできますか?
再建築不可かどうかと旅館業の可否は別の問題ですが、道路や避難の条件が厳しい物件では消防・建築の協議が難しくなりがちです。個別に確認が必要です。
検査済証がない古い戸建でも大丈夫ですか?
区によっては施設完成後に検査済証の写しの提出を求めます。ない場合の扱いは区と建物の状況によるため、購入前に保健所・建築士への確認をおすすめします。
民泊(住宅宿泊事業)なら条件は緩いですか?
住宅のまま届出で営業できる一方、年180日の上限と区の上乗せ規制があります。365日営業したい場合は旅館業の許可が必要です。
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